こんにちは、いっちーです!
今日は、「認知症を支える技術」についてシェアさせてもらいたいと思います。
「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計によれば、2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、じつに6人に1人程度が何らかの認知症の有病者であると明らかにされています。
高齢化が進むと、これらの認知症有病率はどんどん増えていき、2025年には高齢者の5人に1人がなんらかの認知症を発症すると考えられています。
ですがちょっと待ってください。
そんなふうの認知症の人が増えていったら「一体誰が認知症を支援をするの?」って考えますよね。
「施設に預ければいい」「病院に連れて行けばいい」と考えるかもしれませんが、それが意外と大変なのです。
病院に連れて行こうとしたら、予約が取れず何回も通院することになった。
夜中に起きて家族を起こすようになった。
そんなちょっとした問題が積み重なって、仕事を辞めざるを得なくなったり、生活が苦しくなって
認知症を支える人が先に倒れてしまう
という本末転倒なことになってしまうことがあります。
今日はそんなときに悩まないための、
「認知症かも?」と感じたときにとるべき行動
についてシェアしたいと思います。
これを知っておくだけでも、いざ周りの人が認知症になったり、困っている人が出たときに支えるための技術を持つことができるようになるでしょう。
それではよろしくお願いします。
そもそも、本当にそれって認知症ですか?
さて、早速ですがここで日本が抱えている認知症治療の大問題についてまずはシェアしたいと思います。
あなたは認知症って「もの忘れが起こる病気」だと思ってませんか?
残念ですが、それはちょっと間違いです。
「おいおい、いっち〜よ、そりゃないよ(笑)」
と考えられるのも当然ですが、ちょっと待って欲しいんです。
じつは「もの忘れが起こる病気」って認知症だけでなく、いろんな病気でみられるものなのです。
認知症とよく誤認される疾患は「老年期うつ病」です。
「老年期うつ病」という正式な病名はなく、一般的に、65歳以上の方がうつ病を発症した時に用いられる言葉です。
ふつうのうつ病との違いは身体症状が目立つこと、さらに意欲の低下や思考力の低下が起こりやすいことも特徴です。
あなたの周りにどこも病気がないのに「絶対どこか病気があるんや、病院に連れてって〜」と、どこも悪くないのに”病気がある”と確信している高齢の方はいませんか?
そんな人が「老年期うつ病」である可能性があるのです。
そんな「老年期うつ病」の人ではしばしば認知症と誤認されます。
「物覚え悪くなった〜、どこに何あるかわからん」なんて本人が言うと、それだけで信じてしまう人もいると思います。
さらに、「認知症かと思ったら老化だった」ということもよくあります。
誰だって急に記憶を確かめられたらテンパるでしょう?
「昨日の晩御飯って何だった?」って急に聞いてみて、すぐに出てくる人って多分あなたの周りでもそう多くはないと思います。
記憶力は伸び縮みするゴムのようなもので、年齢によって徐々に低下するものではありますが、「ほら、魚だったでしょう」と言われて「あぁ、そうだった、そうだった」と思い出せれば問題ないのです。
認知症なら、同じ質問でも「昨日は絶対に夜ゴハンなんて食べとらん!」と確信を持つようになるでしょう。
これくらい「老化による物忘れ」と「認知症」には隔たりがあります。
さらには、「硬膜下血腫」や「水頭症」など、認知症でなくほかの病気によって「物忘れ」が起こることだってあります。
「なんだ”もの忘れ”が起こる病気って色々あるんだな〜」と認識していただければ、
「認知症=もの忘れが起こる病気」という認識がどれほど恐ろしいことかわかっていただけるかと思います。
だって、認知症は発症して悪化すると治療はできませんが、ここに書かれている「もの忘れを起こす認知症以外の病気」は治療できる可能性があるのです。
実際に臨床でも、認知症だと長年信じられていた高齢者の方がうつ病で治療してすっかりよくなったことがあります。
「急にもの忘れが激しくなったんで認証だと思います」と相談されたかと思ったら慢性硬膜下血腫を発症していて致命的な状況になりかけていた、なんてこともありました。
そうです。
私が思う日本の認知症の大問題の一つとして、「認知症の誤診」があると考えています。
これは専門家である医師でも起こることですが、同時に支援者の方や本人の自己診断による「認知症の決めつけ」によっても起こります。
「記憶力が悪くなった」「帰り道がわからなくなった」と、認知症を恐れるあまりに目を逸らすようになって、治療が遅れてしまう…。
そんなこともとても多いのです。
認知症の治療が遅れるとどうなるの?
さて、そんな認知症の誤診がもし起こらなくとも、認知症は早めに受診するべきと推奨されています。
どうしてでしょうか?
それは認知症はごく初期の段階であれば、治療により発症を予防することができることが解っているからです。
認知症の中にもさまざまな種類がありますが、そんな中でも最も多いのがアルツハイマー病による認知症とされています。
アルツハイマー病による認知症(アルツハイマー型認知症)では、認知症になる一歩手前の段階があり、この段階を「軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)」と近年では表現しています。
ざっくりと言うならば、
「認知症じゃないんだけど、このままだと認知症になっちゃう状態」
と認識していただければ、おおむね問題はないかと思います。
MCIでは、記憶力や注意力などの認知機能に低下がみられますが、「ちょっと記憶力が低下してきたかな?」とただのもの忘れと放置されてしまい、気づいたら認知症を発症していた、なんてことにもなり得ます。
厚生労働省のデータによれば、65歳以上でMCIの人の割合は15~25%と推定されており、「まさか自分が認知症に片足突っ込んでるなんて」と気づかずに生活しているのです。
参照:認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
そんなMCIの状態だけでなく、認知症は早期介入により進行を予防できる疾患だということも解っています。
現在は”まだ”認知症の確かな治療薬はありません。
ですが、早期発見して運動や食事のバランスを整え、福祉サービスの利用や人と会う機会を増やすなどの試みにより、発症を劇的に予防できる可能性があります。
何よりも放置せず、早期発見、早期介入をすることが、本人だけでなくそれを支援する”認知症支援者”のための「心を支える技術」なのです。
認知症かもと思ったら訪れる場所
さて、ここまでで「認知症かも?と思ったら放置しないこと」が本人にとっても支援者にとっても、大切なことだとご理解いただけたかと思います。
とはいえ、認知症かどうかって判断するのは意外に難しいんです!
認知症が進行すると食事や入浴、着替えなど、身の回りのことが目に見えてできなくなるので周りから見ているとよくわかりますが(ただし本人は除く)、MCIなどの軽度認知症だと日常生活に大きな支障が出ないため、家族や周囲の人が気づきにくいという問題があります。
「ちょっと前のことでも忘れてしまう」
「新しいことが覚えられない」
「マルチタスクができなくなる」
「家事や仕事などでの失敗が増える」
などなど、
そんな些細な”違和感”の積み重ねは第3者からみれば明らかでも、本人や家族だからこそ、気づけないこともあるのです。
では、どうすればいいんでしょう?
少し心配になってしまったかもしれません。
ですが、難しく考える必要はありません。
認知症だって、ようは脳の病気です。
日本の誇る”医療”と”福祉”の2つの軸で、十分に早期発見はできるのです。
あなたには”かかりつけの先生”はいますか?
高血圧に糖尿病、ぎっくり腰に花粉症まで、色々なところで医者に関わる機会はあるかと思いますが、身近にいるよく通う先生こそ、認知症かもと思ったら最初に相談する人になります。
「そんなこと言っても、認知症の専門の先生じゃないでしょ?」
「なんで耳鼻科で認知症がわかるの?」
そう思われる気持ちもわかります。
ですが、たとえ専門でなくとも、長く見られてきた主治医の先生だからこそ、些細な違和感に気づける場合があります。
私も臨床の場だと「あれ、この人認知症かもしれないな」と思っても、ご家族に連絡する方法がなかったり、本人が「家族に迷惑かけるから」と連絡を拒まれてしまい、情報が伝えられない場合もあります。
家族にも伝えたいんだけど、伝えられない場面って案外多いんです。
それに、だれしも「あなたは認知症です」なんて言われるのはツラいものです。
自分のことを「認知症ではないか」と疑うことで、ふだんかかっていたかかりつけの先生のところに通わなくなったり、通院そのものを忘れる、なんてこともよくあります。
だからこそ、もしあなたが家族で、認知症の恐れのある人を心配されるのなら、一緒にかかりつけの先生に相談しに行きましょう。
もし、その先生が専門外であったとしても、専門の先生を紹介してほしいとお願いすれば快く紹介してくれるでしょう。
ですが、ちょっと待ってください!
もしかしたら、かかりつけの先生も判断を誤ってしまうことってないでしょうか?
あってはならないことと感じるかもしれませんが、もしかしたら…なんてこともあるかもしれません。
だからこそ、認知症の評価には”医療”だけでなく、”福祉”の軸も取り入れていくことをオススメします。
具体的には、65歳を過ぎたら最寄りの市役所の”高齢福祉課”や”地域包括支援センター”を訪れてみることです。
よく間違えられることですが、これらの福祉サービスは認知症になる”前”に訪れることにも大きな意味があります。
これは地方自治体ごとに変わりますが、市役所などで「もの忘れ検診」や「集団検診」が行われている場合もあります。
「自分が認知症なのか?」というのは自分ではなかなか自覚できないものです。
さらに家族でも、身近すぎて気づけないこともあります。
だからこそ、客観的に見てもらうことも大切な「心を支える技術」なのです。
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他人の心の支え方なんて正解は分かりにくいものです。
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これからも、お付き合いいただけましたら幸いです。
いっちーでした!